「忘れないように」陸上の嶋津雄大が見上げた景色 アジアパラ大会
高億翔
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愛知・名古屋アジアパラ大会の陸上男子5000メートル(視覚障害T13)決勝で、1位でフィニッシュした嶋津雄大(GMOインターネットグループ)は、すぐにはトラックを後にしなかった。
ともに決勝を走った堀越信司(NTT西日本)らとスタンドを見つめた。「今しか見えない景色」。金メダルを手にした26歳は言った。
序盤から先頭に立ち、独走状態で世界記録の更新を狙った。1周68秒を目安に刻み、1000メートルを過ぎたあたりから表情は険しくなった。それでも粘り、ラスト2周で再びペースを上げた。「世界記録を更新できなかったのは心残り。でも、金メダルという最大の目標は達成できた」。自国開催の大舞台で結果を残した。
万全の状態ではなかった。約1カ月半前に左足首付近を故障。一時は完全に練習を休んだ。大きな故障はほとんど経験がなく、「最後まで走り切れるか」という不安もあった。それでも「今日は今の全力を出し切れた」と振り返った。
創価大時代に箱根駅伝で2度の区間賞を獲得し、実業団でも第一線を走ってきた。今年から視覚障害T13でパラ陸上に挑戦。初戦となったモロッコで5000メートルの世界記録を樹立した。今回は、パラ陸上ではまだ2戦目で、国内で走るのは初めてだった。
嶋津が抱える「網膜色素変性症」は進行性で、今後さらに見えづらくなる可能性がある。ナイターとなったこの日は照明のまぶしさを抑えるため、帽子をかぶって走った。「音は今後も聞こえるかもしれないけど、見るのはいつ最後になるかわからない」。だからレースを終えた後、帽子を取り、まばゆい光を放つ競技場の光景を目に焼き付けた。
日本パラ陸上競技連盟から「一般競技とパラ競技の架け橋になってほしい」と言われたことが背中を押した。嶋津自身もパラで頂点を目指す一方、駅伝も走り、五輪への挑戦も続けるという。「走りでその使命を全うできるように」。二つの舞台を隔てることなく走り続ける。その一歩となる金メダルだった。
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この記事を書いた人
- スポーツ部|大相撲担当
- スポーツ全般、人権
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