深掘り
フォルクスワーゲンに迫る中国 日本にも「対岸の火事」でない理由
ドイツ東部ツビッカウ=西尾邦明
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経済インサイド
ドイツ製造業の象徴で、かつて世界一の販売台数を誇った自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が苦境にあえいでいる。電気自動車(EV)の販売が伸び悩むなどして、ドイツ国内で最大10万人の削減を計画し、4工場の閉鎖を視野に入れる。このうちの一つで、VW最大のEV生産拠点がある東部ツビッカウを訪れて見えたのは、ライバルである中国勢の影だ。
「未来のために団結して闘う」「5年後も仕事あるの?」
8月下旬、ツビッカウ郊外にある工場入り口には、そんな横断幕やプラカードを掲げた厳しい表情の従業員たちの姿があった。7月に大規模なリストラ策を発表して以降、初めて工場を訪れるオリバー・ブルーメCEO(最高経営責任者)を待ち構えていたのだ。
その一人、組み立て部門で働くスベン・フロイントさん(52)は「いち早くEV化したことは今でも誇りに思っている。ただ、メイド・イン・ジャーマニー(ドイツ製)への誇りや家族のような絆がどんどん失われている」と嘆いた。
「VWがせきをすれば、地域が風邪をひく」
東西ドイツ統一に伴う旧東側への代表的な投資案件として1990年に設立された工場は2022年、生産する車種をすべてEVに切り替えた。当時は「未来の工場」ともてはやされ、先行きも明るいように思われた。巨大な工場で働く従業員は1万1千人に上った。
しかし、EVの販売は思うように伸びず、今では8千人にまで減らされた。来年にはさらに生産ラインの縮小が計画されている。31年以降は「生産の割り当てが確保できない」とされ、代替活用策が見つからなければ、閉鎖も視野に入る。
地域では4人に1人が自動車関連産業に携わり、「VWがせきをすれば、地域が風邪をひく」と言われるほど。サービス産業を含め地域全体をうるおしてきただけに、閉鎖となれば大打撃だ。
「一番の心配は、子どもたちの未来」
フロイントさんは1998年から派遣社員として10年間勤めた後、念願の正社員となった。生活が安定し、同じ工場で働く妻と結婚。子どもを授かることはなかったが、経済的に恵まれない義理の妹の子ども2人を養ってきた。そのうちの1人も、今はこの工場の実習生だ。「工場がなくなれば産業が消え、地域から人々がいなくなる。一番の心配は、子どもたちの未来だ」とこぼす。
労働組合によると、CEOのブルーメ氏はこの日、労使の集会で「関税、新たな競合他社、地政学リスクなどで自動車産業が甚大な圧力にさらされている」と説明。コスト削減が必須だとして「小さくなることではなく、強くなることが目的だ」とリストラ策に理解を求めた。
ただ、工場閉鎖については「最後の手段」と述べるにとどめ、2031年以降の生産維持の確約に、少なからず期待を抱いていた労働者側には失望感が広がった。
日産販売店にBYDの車がずらり
そんな重苦しい雰囲気が漂うツビッカウ中心部を歩くと、見慣れた「NISSAN」の赤い文字が見えてきた。
日産自動車の販売店に並んで…
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この記事を書いた人
- 欧州総局|経済担当
- 金融・財政、原発・エネルギー、AI・テクノロジー
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