インタビュー
松原央
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アジア最大の障害者スポーツの祭典・アジアパラ競技大会(愛知県など、18日開幕)がもたらす、施設などハード面にとどまらない「心のバリアフリー」とは何か。パラスポーツを長く取材し、11月6日に全国で公開される障害者野球の映画「4アウト もう一度、プレイボール」の原作者でもある作家の平山譲さん(57)に聞いた。
スポーツを通した人間の挑戦や再生の物語を描いてきた平山さん。東京初の障害者野球チームの創設にまつわる実話を小説にした「4アウト」(2005年)のほか、パラ選手を題材にした短編集「パラリンピックからの贈りもの」(12年)などの著作がある。
平山さんはインタビューで、パラスポーツの魅力について「障害につきまとう社会のバリアー(壁)や自分自身の心の闘いから一歩踏み出し、人生を取り戻していく選手たちの姿に、人間の『生きる力』を感じた」と話した。
日常生活の妨げとなるハード面のバリアーだけではなく、社会には障害者を「弱者」や「マイノリティー」だと一面的にとらえる風潮がまだ残っていると指摘する平山さん。だが、取材で出会ったパラ選手たちは、弱者ではなく「完璧ではない自己を受け入れたからこそ、他者を許容し、共感できる強さと優しさ」を持っていた。
「事故に遭ったり病気になったりして障害があったとしても、人生は続いてゆく。スポーツや仲間たちに出会い、競技を通じて自分が思っていた限界を乗り越える中で、心の葛藤を克服していく――」。こうした経験がもたらした強さではないかという。
そんな選手たちが、21年の東京パラリンピックでは、コロナ禍で接触が制限され、人や社会を隔てる「壁」に悩んでいた我々に大きな感動を与えてくれた。
「身体的な障害だけではなく、多くの人が人とのつながりだったり、仕事上の悩みだったり、生きにくさを抱えている」と平山さん。人と同じであることに価値を求めてしまいがちな我々に、「誰もが一人として同じではないし、同じでなくていい」という励ましのメッセージを与えてくれた大会だったと振り返る。
「人を隔てるバリアーというのは社会にあるだけではなく、自分の心の中にもある」。アジアパラ競技大会では、選手の姿を通じて、多くの人が互いに違いを認め合う「心のバリアフリー」にたどり着く経験をすることを期待しているという。
「日本を代表する選手たちが、世界を相手に素晴らしいパフォーマンスで観衆を魅了してくれるはず。特に障害がある人との接点がなかった子どもたちが、自分たちの町で世界のアスリートを間近に見ることで、誰もが生きやすい共生社会という未来に寄与する大会になると思います」
平山譲(ひらやま・ゆずる) 1968年東京生まれ。出版社勤務を経て作家デビュー。主な作品に、阪神・淡路大震災で被災した主人公がプロゴルファーを目指す姿を描いた映画「ありがとう」(2006年公開)の原作や、08年にNHKでドラマ化された「ファイブ」などがある。
映画「4アウト」は、オーディションで選ばれた実際に障害を持つ選手役らが織りなす笑いと感動のヒューマンドラマ。主演の相葉雅紀さん演じる監督が、選手たちに感化されて人生の意味を問い直す姿も描く。
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