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宮下洋一さんの欧州季評
フランスの国民議会(下院)は今年7月、「死の援助法」を賛成291、反対241で可決し、いわゆる安楽死を認める法律を成立させた。各国で安楽死の現場を取材して10年になるが、欧米で広がる「死ぬ権利」は、もはや覆せなくなっているというのが、ここ最近の私の印象だ。
フランスで法制化された「死の援助」の対象は18歳以上で、フランス国籍を持つか、安定的かつ合法的にフランスに滞在している私のような移民も含まれる。精神的な苦痛だけでは対象にならず、重篤で治癒不能な病に陥り、耐え難い肉体的または精神的苦痛を抱え、明確な意思表示ができることが条件だ。原則として、患者本人が致死薬を自ら投与して自死するが、身体的に自ら投与できない場合は、医師か看護師が直接投与することもできる。
今回成立した法律のもとになった法案が提出されたのは、2025年だった。下院で可決された後も上院で否決されるなど、成立まで議論は難航した。争点のひとつは、安楽死を容認する前に、苦痛を取り除く緩和ケアを充実させるべきではないかという議論だった。
フランスでは05年に「レオネッティ法」、16年に「クレイス・レオネッティ法」によって延命治療の中止や、末期患者を深い鎮静状態に置き、死に至るまで痛みを和らげる「緩和的鎮静」を可能とする制度があった。しかしこの緩和ケアも、それを必要とする患者全員に行き届いていたわけではなく、安楽死を求めて隣国のベルギーやスイスに行く患者があとを絶たなかった。
フランスの法制化により、欧州で「死ぬ権利」を認める国がまたひとつ増えた。米国の一部の州、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの先進国でもすでに死の援助法が容認され、安楽死が実施されている。
いったいなぜ、西洋諸国では安楽死の法制化が増え続けているのか。過去数年間で行った三つの取材から見えてくるものがあった。
一つ目は、昨年9月から数カ…
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