孤独のグルメ作者の漫画「遥かな町へ」、鳥取のかばん会社が映画化
佐藤常敬
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谷口ジロー作品、1社単独で製作
孤独のグルメで知られる故・谷口ジローさんの漫画「遥かな町へ」が映画化された。9日から全国約50館で順次公開され、欧州など海外での公開も予定している。製作は、鳥取県倉吉市を拠点とするバッグメーカー「バルコス」。複数社が出資してリスクを分散する「製作委員会」方式ではなく、1社単独で担った。
作品の舞台は倉吉。里帰りした48歳の主人公は34年前にタイムスリップし14歳の体に戻ってしまう。家族や初恋の人と過ごしながら、人生を見つめ直し――。
「映画は究極のブランディング」倉吉から世界へ
原作者の谷口さんは鳥取県出身で、監督の錦織良成さん(64)も隣の島根県の出雲市に住んでいる。山陰と縁の深い作品だが、それだけで映画はつくれない。製作費、人手、興行収入。クリアすべき課題が多いなか、「やろう」と決めたのはなぜか。
バルコスの山本敬社長(60)は「映画は究極のブランディングであり、ものづくり」という。「倉吉というすばらしい地域で暮らす自分たちのライフスタイルそのものを、世界に伝えるきっかけになる」
「かっこいい仕事は都会の人間がする」と言われ
もともと、東京で雑誌などのカメラマンをしていた。映画の道を志したこともあったが、鳥取に戻り、1991年に起業。倉吉から世界へ、という夢を掲げたが、創業当初、思いはなかなか伝わらない。地元の銀行からはこう言われた。
「かっこいい仕事は都会の人間がすること」
本当にそうか。あらがうように働いてきた。ビジネスの足場を広げ、有名アパレルなどのOEM(相手先ブランドによる生産)を手がける。
やがて地力がついて自社ブランドが認められ、イタリア・ミラノの皮革製品見本市に乗り込む。2013年に改装した伊勢丹新宿本店の売り場では当時、プラダなど世界的ブランドが並ぶなかで唯一、日本ブランドのバッグメーカーとして販売された。
東京じゃない、日本一人口の少ない鳥取のこの街からできることがきっとある。
「倉吉が好き。ここから世界に通用するブランドを作りたい」
ハンドバッグ業界と映画界と地方。ばらばらなようで重なるところもあるという。「一番リスクをとる作る側の立場が弱い。かつてのハンドバッグ業界とそっくり」。さらに「地方が弱いのは、付加価値の創出が弱いから」。
ここから何を作るか。思いの先に、この作品があった。
忘年会のひと言、雷にうたれた
「映画をやりたい思いは前からあった。でも、自分たちの手で本当に作れるなんて」。バルコスの山本敬社長(60)の夢が動き出したのは、2024年の冬だった。
年末の忘年会。もし自社で映…
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