インタビュー
聞き手・前田伸也
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大手受験塾の栄光ゼミナール(東京都)によれば、近年の入試では哲学的なテーマを扱う問題が増えているそうです。生成AI(人工知能)が身近になり、さまざまな問いへの答えが瞬時に得られるようになった現代だからこそ、哲学が必要だという声もあります。わかりきったことを疑うことの意味について述べた入試問題を題材に、教育哲学者で東京理科大学の井藤元(いとうげん)教授に聞きました。
「本当」が見えなくなっている時代
この入試問題には、古代ギリシャのソクラテスが哲学の父として紹介されています。このソクラテスが「真理」をめぐって対話を繰り広げた同時代の哲学者として、ゴルギアスという人がいました。彼は「ソフィスト」と呼ばれる人たちの中の主要人物で、巧みな弁論術を用いて、いかなる事柄についても、どんな相手でも説得できると唱えていました。
ソクラテスの弟子プラトンの著書「ゴルギアス」には、ソクラテスとゴルギアスとの対話が収められています。ここでゴルギアスは、こう言ってのけます。専門知を持たない大衆を相手にするなら、医者よりも弁論家のほうがうまく説得できる。医術を知らない聴衆には、どちらが正しいのかを確かめるすべがない。だから語りの巧みなほうが信じられるのだ、と。
しかしソクラテスは、それを懐疑の目で見つめます。彼が重視するのは、ゴルギアスとはむしろ逆。わかった気にさせるのではなく、わかっていたはずのことを、もう一度わからなくさせる。さまざまな人に対して、「本当にわかっているといえるか」と問いを突きつけ、相手が何もわかっていなかったことをあらわにしていくという対話を仕掛けていったのです。
ただ、その果てに、ソクラテスは死刑になってしまいます。国家の神々を認めず、若者を堕落させた――それが表向きの罪状でした。けれども問い詰められた人々からすれば、誇りを傷つけられたのでしょう。ソクラテス的なあり方は、疎ましく、邪魔なものと映りました。
語りが流暢(りゅうちょう)で、真偽を問わないままにわかったつもりにさせられてしまう、という説得上手な弁論術は、現代の生成AIが出してくる答えとも似ています。加えて、パンデミックや戦争、環境問題・異常気象など、誰にとっても前提にできるような「本当」が見えなくなっている時代です。
批判的思考とは
簡単に説得されず、自分の立…
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この記事を書いた人
- 東京社会部|教育担当
- 大学、高専、通信制高校
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